「こども基本法」によって何が変わる?〜前編〜
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「こども基本法案」が令和4年6月15日に国会で可決成立し、令和5年4月1日に公布されます。
この法律がどのような法律なのか、子どもの虹情報研修センター(日本虐待・思春期問題情報研修センター)の増沢高先生に伺いました。前編と後編、2回に分けてインタビュー内容をお届けします。
ー「こども基本法」はどのような法律でしょうか。増沢先生、教えてください。
そもそも日本は子どもの権利について非常に弱いんですね。
子どもの権利条約を日本が批准したのが、1989年。その当時は「日本には虐待なんてない」「そんなことは発展途上国の問題」という理解が一般的でした。
でも、そこから虐待の現状が明るみになって、今では20万件を超える通告件数となっています。子どもにかかわる法律では、いくつか子どもの権利条約に一部準じたものがありましたが、2016年の改正児童福祉法は権利条約の精神にのっとった理念であることが明記され、今年においては子ども権利条約に則った法律「こども基本法」が作成されました。
条約批准から約30年かかっています。
これまでも日本では法律ができることで、国民の理解が深まることがよくあります。
今回の子ども基本法も、すべての子どもの権利を保障する根拠となる法律になっていけると、子どもの権利についての理解が一層進んでいくことが期待されます。
ーこの「こども基本法」はどのような内容ですか?
基本理念では、①基本的人権の保障・差別の禁止、②生命生存、発達に対する権利、③意見表明権、④子どもの最善の利益、⑤家庭養育の基本、⑥子育て環境の整備
それぞれが子どもの権利条約に則って基本理念が位置づけられています。⑤については、養育の基本を家庭としていますが、専門家の中には「基本は社会」という意見も多く見られています。
ーなるほど、特に大事な部分はどこでしょうか?
この法律の中で、特に大事なことが「子どもの最善の利益の保障」だと思います。
すべての子どもにとって、最善の利益とはなにかを考え、提供することが求められます。つまり、子どもたちの育ちにとって、なにがベストなのかを考え、関わることが大人に求められます。
そのなかで十分にできていない、課題があるのが、マイノリティと呼ばれる子ども集団に対してです。すでに、性的マイノリティの方や虐待を受けた子について知られていることとして、マジョリティの世界で「良いこと」とされるものは、マイノリティの子には苦しい体験になることもあるということです。
例えば、1/2成人式。この授業は多くの子にとっては良い取り組みなのかもしれませんが、例えば虐待を受けて児童養護施設で生活している子たちや里親に委託されている子にとってはどうでしょうか。この取り組みが、その子にとって最善の利益になるでしょうか。
この法律では、それぞれの子どもが持つ背景を理解し、すべての子どもにとって最善の利益を追究することが求められます。
社会的養護の子どもは45000人、全子ども人口の約0.2%。要保護児童は約1%。把握しきれていない家庭もおそらくその5~10倍はいると思います。それでもクラスの中では3人程度です。里親に委託されている子どもは学校で1人ということもあると思います。
そんな子にも耳をかたむけ、その子にとっての最善の利益を保障していく姿勢がスタンダードになっていくことが期待されています。
なるほど。すべての子どもにとっての最善の利益を補償していく姿勢が大人には求められていくんですね。
次回は「こども基本法」制定で、今後の世の中に求められることについて引き続きご紹介します。
後編の記事はこちら