社会的養護のアフターケア事業における支援事例【2】〜NPO法人えんじゅのお取り組み〜
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2022年の児童福祉法改正によって、アフターケア事業の対象者が広がることになりました。
「社会的養護の措置解除者(退所者)」から、「社会的養護経験者“等”」へ。虐待経験がありながらもこれまで公的支援につながらなかった人たちも、事業の対象に含まれることとなりました。
そこで今回は、その変化に合わせて活動を展開されている、社会的養護のアフターケアに取り組む団体で構成する全国ネットワーク「特定非営利活動法人えんじゅ」の理事長 高橋亜美さん、副理事長 矢野茂生さんに、活動の想いや法改正によって変わってきていること、今後の展望などについてお伺いしたお話を全6回の連載形式でお届けします。
第2回の今回は、おふたりが理事を務めていらっしゃる「特定非営利活動法人えんじゅ」の活動内容についてお伺いします。
ー高橋さん、矢野さん、えんじゅについて詳しいお話を伺えますでしょうか。
どのような取り組みをされているかや、どういう組織体、ネットワークの中でどんなことをされているかについて教えてください。
最初から話すと実は、亜美さんちがジャムを作っていて、大分のカボスを使ったジャムも作ってほしいなと思って、亜美さんちにカボスを送って「ジャムこれで作ってみてよ」みたいなやり取りがあったのが今から8年ぐらい前です。
亜美さんとベッキーさん(ゆずりはの職員)が大分に遊びに来てくれて、そして、大分のどんなカボス畑で作っているのか観察に来て、見学に来てくれまして。
そしてそこに、福岡のNPO 法人そだち木の安孫子さん(えんじゅ理事)に「安孫子さんもちょっと遊びにおいでよ」って話をしたんです。
色々話をする時に、やっぱり当時亜美さんが一生懸命やってたアフターケア事業を、うちも県からお話があってその翌年からアフターケア事業を始めようかなと思っていた時に、そういうアフターケア事業が、横に繋がってないっていうことを初めて知ったんですよね。
横に繋がってないというのがどういうことかというと、自治体によって当時はいろんな格差があったりとか、地域性もすごく強かったりとかします。
でもケアリーバー、つまり社会的養護の経験者はどの自治体にも一定数います。
そうなると施設を退所した時に、退所後の支援がある県と、ない県があるんだっていうことにびっくりしたんです。
そこでみんなで相談して、 「もうやってみようよ」みたいな、まずは「大人たちが横に繋がろうぜ」みたいな話が、みんなで色々話す中で出てきて、えんじゅっていう名前を亜美さんがつけてくれたんです。
どこにでもあるような木、どこにでもあるような街路樹、そんな木の名前がいいよねっていうことで作ったのが1番スタートアップの時です。
そしてえんじゅを作って、どんどんいろんな団体が入ってきてくれて、いろんな研修とかやるんですが結局「みんなで仲良くなる活動」をずっとしてきました。
「みんなで仲良くなろうぜ」と、支援者が仲良くなる。
それから、いろんなその自治体ごとの格差もあるので、その制度、政策の勉強会等もしました。
そうしている中で、令和の法改正が見えてきて、対象者も広がるとか、拠点事業っていう形に変わっていくっていうところで、いろんな流れから認定NPO法人かものはしプロジェクトの村田早耶香さん(えんじゅ理事)や他の支援団体の方々も、若者の孤立とか若者の困難をどうにかしたいっていうところをやはり強く訴えてくれたんです。
それでまたそこでみんなでまた話をして「一緒に仲間に入ってやれるといいよね」という話になり法人化を目指し設立したという流れです。
支援者と言われる人たちの孤立感とか孤独感って、僕、半端ないと思ってるんですよね。
そして制度制度って言って制度ばっかり作っても、なんか制度は縄張りにしか僕は見えないので、 なんか縄張りだらけになっちゃうので、それはちょっとどうなんだっていうことで。
それで法人化して、全国的にそれぞれの地域で、それぞれの場所で困っていらっしゃることとかいろんなものをこう吸い上げていくような、そういった1つのプラットフォームを、事務局という名前を作って、そこを今かものはしさんに持っていただけて、1年経つ頃にやっと法人化してこれからの法人化した後の動きがますます楽しみですね。
それから、その法人化に向けて色々レクチャーしたおかげで、 正会員さんや賛助会員さんが協力してくれて、私たちも一緒に勉強したいということで例えば長野の社協さんが入ってきたりしてくれました。
そうやっていろんな、多様な団体が多様な知見を持ち寄って、さっき言った属性を突破するのは、実は私たちも属性を突破していく必要があるんですよね。
私たち側が属性をどうやって突破するか、違う文化をどうやって私たちは受け入れていくのかっていうところがすごく大事だと思ってるので、そういう活動をこれからしようと思ってます。
それで協議会を作って、もっともっと本当に今何が必要かっていうことを自由に話し合えるようなもっとフルオープンでやっていけるような、 社会に見えやすい団体にしていけるといいなっていう風に思っています。
ーありがとうございます。まさかカボスから始まっている繋がりだったんですね。
高橋さんからもお話を伺えますか?
もう全部言ってもらったって感じですけど、苦しい思いしている人たちと、向き合ったりサポートしたり、時にガチンコしたりとか、 まあまあなエネルギーが必要で、それをしていくためにやっぱり私たちがすごい元気じゃないとっていうのがあります。
あと「孤立」ですね。 支援者や団体が結構孤立化しているんです。特にその当時、アフターケア事業ってほぼ公的なお金もつかないし、資金もカツカツの中で、職員1人、2人みたいな体制で、なんとかやってる団体も多かったですし。
まず私たちが元気に明るく楽しくやっていけるように、お金を引っ張ってくるのはなかなか難しいんですが、でも仲間にはすぐなれるよねっていうので、 まずそこから始めたえんじゅっていうのがありまして。
協議会とかネットワークって、 大きくなっていくと、大概「何のために作ったそのネットワークだっけ」みたいになるんですけど、今のところえんじゅはまだ大丈夫。
本当に和気藹々で、ねぎらいが団体同士あるところが、それが本当に私たちえんじゅの1番の持ち味かなと思ってます。
ーありがとうございます。
支援者支援って、今よく言われてるところではあると思いますが、みんなで集まって和気藹々と楽しむことも、ネットワークの中で大事にされていることなんですね。
そうですね。まずそれがあって、そして政策提言とか、やっぱり実状に応じて制度が変わらないと、その仕組みや補助金もつかないっていうのがあるので、そこも合わせてやっていきたいです。
まず軸になるのが、 私たちがやっぱり生き生きとこの仕事やれるっていうことがまず大事かなと私は思ってやっています。
高橋さん、矢野さん、ありがとうございます。
次回は2022年の児童福祉法改正を受けて国の制度が変わっているところについて、改めて変化をどのように捉えられているのか伺えたらと思います。