SURE for All Children - 東京学芸大学こどもの学び困難支援センター

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第2回公開研究会のご報告

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先日、第2回公開研究会が行われ、当センター専門研究員の松下先生、大竹先生から児童虐待とこどもの学び困難について児童養護施設・児童自立支援施設での勤務経験をもとにご報告をいただきました。参加してくださった皆様に心より感謝申し上げます。これからもこどもを支える仲間として繋がりの輪を持っていければ幸いです。

以下は、池ヶ谷駿介さん(東京学芸大学・3年生)の感想文です。

【第2回公開研究会 感想】

 前回(第1回)の公開研究会に引き続き、参加いたしました。今回は現場で活躍されているお二人のスピーカー(松下さんと大竹さん)から、児童養護施設そして自立支援施設でいかなる学びの困難さが生じているのかについてご教示いただきました。
 まず松下さんからは、社会的養護とは何ぞやということをお話しくださいました。基本的なところからイラストを交えて簡潔かつ容易に教えてくださったことが印象的です。続いて、松下さんが勤務されている児童養護施設ではどのような子供が暮らしているのか、そして児童養護施設はどのような変遷を遂げてきているのかということに触れてくださいました。これまでの「親がいない子どもたち」を預かる場所から、現在では「親はいるけど一緒に暮らせない子どもたち」を保護する場所になってきたというお話を聴いて、非常に現代的問題だなと感じているところです。元々は戦争孤児を引き取る場所を発端としていた児童養護施設が、現在親からのDVやその他精神面的な暴力を受けている子どもたちになるべく早く安全な場を提供していることからは、子どもたちは社会で育てていく必要があると教えられている気がします。同施設ではさまざまな学び支援が行われているようで、学習支援は無論、生教育(生きるとは何かから考えるそうです)や平和学習なども積極的に実施されているとのことでした。「辛い経験をした子どもたちにこそ、今後の人生をよりよく歩んでいくための学習は欠かせない」ということには私も共感です。彼ら彼女らは児童養護施設で生活してきたことを負い目に感じてしまうことも多いようですが、以上のような活動は一般的にも実施されていることで特別なことではありませんから、そのようなバックボーンを彼ら彼女らがマイナスに思うことは少しでも軽減させるのではないでしょうか。また、このような場で「やればできる」や「直ぐに助けを求められる」というのは、彼ら彼女らの大きな支えになるとのことでした。
 続いてお話しいただいた大竹さんからは、児童自立支援施設はどのようなことを目的としているのか、どのような子どもたちが入所してくれるのかなどについてを学びました。同施設にやってくる子どもたちはいわゆる非行が多いようですが、最近では発達障害をもつ子どもたちだったりゲーム依存の子どもたちだったりも後を絶たないそうです。発達障害やゲーム依存は昨今話題になっているので、身近なものだな感じています。また子どもたちの非行は虐待と負のループで繋がっているとのことでした。親などからの虐待が起こってそれから逃れるために子どもたちが非行をし、それを受けてまた虐待が発生してそれを避けるべく更なる非行が行われるといった相互影響・ネガティブスパイラル(非行が発端となるケースもあります)は、一家庭内で収まるものではありません。このときに児童自立支援施設が仲介役となり、虐待者と被虐待児とを離して保護し、それぞれにケアや支援をする時間をつくることは重要でしょう。最悪の事態に陥る前に手を差し伸べることのできる者がいるのは、すべての子どもたちが明るい未来を送れるようにするためには必要だということを改めて実感しました。
 お二方のお話を聴いて共通していたのは、どちらの施設においても集団での活動が実施されていたり達成感を得るためのアクティビティが用意されていたりすることでした。特に子どもたちは相互に協力して行うクラブ活動のようなものでは、同じ(あるいは類似した)境遇にいる子どもたちだからこそ、それぞれに心を打ち明けられるのではないかと考えます。その中で誰かを頼りながらも誰かに頼られる経験を彼ら彼女らがすることは、彼ら彼女らが社会に出たときにも胸を張って生きるための大きな糧になり得そうです。また、何かに取り組んで成功するという経験も、彼ら彼女らが自己肯定感・自己効力感を得るためには欠かせないことです。自分という存在が周囲に言い影響を及ぼせていると感じれることで、彼ら彼女らはポジティブな方向に考えたり行動したりすることができるのではないかと私は感じています。ただし、どちらの現場でも「子どもたちとの関係性構築に時間がかかる」ことがあるようです。そのような子どもたちは特に大人への不信感を強く抱いていると思われますから、粘り強く彼ら彼女ら一人一人にアプローチをしていくことが大切なようです。さらには、「退所してしまうと、それまでの学びが水の泡になってしまう」や「家庭との関係性が退所と同時に途絶えてしまう」など、継続的支援や学びの継続が突如として途切れてしまうこともあるそうです。このようにして支援が施設内外を問わず行われるためにはそれなりのお金や人手が必要かと思いますが、そのような施設では人員不足や資金調達に困ってはいないのでしょうか。新たな機会があれば、この点について伺えればと思います。
 今回の研究会では、このようなケースを専門的に学んでいない門外漢な私でも分かるように、平易な言葉で基礎の基礎からご説明いただきました。ここでの学びを踏まえて、私も本を読んだりインターネットで調べたりしようと思いますし、できる範囲で具体的な支援を行えたらと考えています。今後も機会があれば是非、参加しようと思っています。松下さん、大竹さん、第一線で活躍する方からの貴重なご意見・ご報告ををどうもありがとうございました。理論だけではない、現場の生の声と難しさを学ぶことができた貴重な研究会でした。

次回のご案内

第3回公開研究会は9月30日(金)17時30分から予定しております。第3回・第4回では不登校とこどもの学びについて検討します。皆様のご参加心よりお待ちしております。