2022年の児童福祉法改正について〜後編〜
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子どもの虹情報研修センター(日本虐待・思春期問題情報研修センター)の増沢高先生に、2022年に行われた「児童福祉法改正」に関してお話を伺っております。今回は後編のインタビューをお届けいたします。
インタビュー記事前編はこちら
ー 訪問事業って今までもありましたよね?私の家にも赤ちゃんが生まれたときに訪問してもらった経験があります。そこから変化があるのでしょうか?
そうですね、「訪問支援事業って今までにもあったのでは?」と思いますよね。
今回新設された事業は、今まで以上に幅広いものになっているんです。今までの訪問支援は“子育て”を助けるといった意味合いが強かったのですが、今度は子ども自身を対象にしています。もちろん、ヤングケアラーも対象にしています。
だから、料理や掃除といった家事だけでなく、子どもの送迎であったり、子育ての助言をしたり…といったことも行うことになりました。
そして次に、児童育成支援拠点事業です。
ー 今、ニュースでやっている「第3の居場所」というものでしょうか?
そうですね。
子どもたちが1日の多くの時間を過ごすのが家、それから学校ですね。学校が終わったら家に帰ってくるわけですが、中には親が病気をしていたり、親子関係がとても悪かったり、親が夜遅くまで働かざるをえなかったり、様々な問題で家に帰っても一緒に食事をとれない親子がいます。そういったケースすべてを親子分離するというのは現実的ではありません。
その場合に、学校帰りに別の場所で過ごして、夜ご飯まで食べてからお家に帰る、といったことが出来る場所があったら良いですよね。
こういったことを行うのが、先ほど話に出ていた、第三の居場所事業と言われるものです。実際に設置している現場の話では、かなりニーズは高いようです。
ー なるほど、子どもにとって、その子の育ちを支える居場所を提供できることはよいことだと思います。もうひとつの事業についても教えてください。
次に親子関係形成支援事業について。これは字の通り、親子関係の再構築に向けた取り組みです。親子関係がうまくいかなくなってしまった時に、心理職などの専門職が関わって表現の仕方を学んだり、お互いの気持ちを理解したりするためのプログラムなどがあります。こういったことが市町村のサービスとして受けられることになります。
これらの新しい事業に加え、これまであったレスパイトやショートステイといった事業も拡充されています。
子どもを預かってもらうだけでなく、親子が一緒に利用可能になっていきます。何か問題が起こった時、子どもだけを預かるのではなく、親子一緒に支援が受けられる仕組みを作るべきだということを、私は以前から申し上げていました。
それが反映されたことはとてもうれしいことです。ゆくゆくは、一時保護にも保護者が同伴できる制度ができると良いと思っています。一部の自治体では、子どもを保護した施設に週3回程度母親に泊りに来てもらい、親子関係を調整したりアセスメントするといったことを行っているようです。
ー 今までよりも、利用できるサービスの幅が広くなるということですね。 自治体によって子育て支援のサービスには差が大きいと感じています。この点について教えてください。
はい。これから問題となってくるのは、この法律をもとに各自治体がどのような施策が講じられるかということですね。
国から予算は出ますが、実際に支援を行うのは、都道府県、市町村になります。
質問にあったように、施策によっては、ある市町村ではやっているけど、別のところではやっていない、なんてことも起こりうるわけです。ですから、皆さんは自分の市町村がどのようなサービスにどこまでお金をかけているのか、関心をもっていただけると良いと思います。
子育て支援にお金をかけている市町村では、出生率が増加しているところもあります。
そうすると必然的に経済的発展もある。しかし、市町村間での差があまりに広がってしまうのも問題です。それを防ぐために、モデル事業を行い、その成果を報告しあうということは有効です。市町村として取り組んでいる子育て支援を発信してゆくことは、その市町村の評価にもつながります。やはりどこも良い市町村になりたいと思っていますから、評判や世論は重要です。住民自身が自分の住む地域のサービスをよく知って、評価したり意見を言っていくことはとても重要なことです。
増沢先生、詳しく教えてくださりありがとうございました。