「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)について
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小学校・中学校の不登校児童生徒が過去最高の30万人余りに至る中、文部科学省は2023年(令和5年)3月に「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)を取りまとめ、公表しました。そのポイントは「学校」へのアクセスではなく、「学び」へのアクセスを大切にしようとしているところです。今回のプランではこれを実現するために3つの目標が立てられていますので、以下、それぞれを見ていきたいと思います。
なお、COCOLOプランについて、文部科学省がわかりやすい資料を作っています。ご覧になりたい場合は、次のURLからアクセスしてください。
https://www.mext.go.jp/content/20230418-mxt_jidou02-000028870-cc.pdf
1.不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整える
整えようとしている「学びたいと思った時に学べる環境」として次の5点が挙げられています。
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いずれも重要な取組ですが、ここで目を配っておきたいのが「子どもの権利」です。1989年11月20日に国連総会で採択された「子どもの権利条約」(日本は1994年に批准)は4つの原則と4つの権利を大切にしよう、と世界に投げかけました。4つの原則とは①差別のないこと、②命を守られ成長できること、③子どもにとって最もよいこと、④意見を表明し参加できること。4つの権利とは①生きる権利、②育つ権利、③守られる権利、④参加する権利、です。「学びの場」の数を増やすことはもちろん必要ですが、そうした場が、この4つの原則に則って、4つの権利を実現することができる環境になっていることこそ重要です。ちなみに4つの原則は2023年4月施行「こども基本法」にも盛り込まれています。
2. 心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援する
この点については次の3点が挙げられています。
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考え方としては困っている、辛いといった「SOS」を先生やカウンセラーに相談しづらい児童生徒のために端末を活用して早期発見するとともに、不登校児童生徒の保護者が抱え込み、孤立しないように「チーム学校」で応援する、というものです。確かにコロナが蔓延するなか、オンライン活用がひろまり、不登校の児童生徒にも有効であるという事例が紹介されてきました。最近ではVR(ヴァーチャル・リアリティ)等の技術を用いて、在宅のまま授業に参加する方法の研究も進んでいるようです。しかしながら、そもそも相談するためのエネルギーが貯まっていない、複雑な家庭環境があって家族支援といっても容易に進まない、という状況におかれている子どもがいることも事実です。そうした生活全体の課題を把握する中で不登校の問題を丁寧に位置付けていく必要があることを忘れてはならないでしょう。
3. 学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にする
学校の改革はこれまで様々に取り組まれてきましたが、今回改めて次の6点が掲げられました。
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学校改革については、「わかる授業」と「地域づくり」という二つの側面から取り組む必要があるのではないか、と考えてきました。その理由は不登校という状態に有る無しに関わらず、私たち大人はこどもの学習権と社会参加権を守る義務があるからです。学校に通い、教室にいても授業の内容についていけず、教室の中で学習する権利から排除されている子どもも少なくありません。不登校状態にあって、不登校特例校、教育支援センター、フリースクール等に通える子どもも実は一部に限られています。そうした中、どの子どもにも「わかった!できた!たのしいね!」と思える授業を届け、今まで以上に「明日も来たくなる学校」を作っていく必要があります。これこそが「温かみのある学校」ではないでしょうか。
一方、地域の中に安心できる人が寄り添ってくれる場所(居場所)がない。多様性を認めようとしない、あるいはそもそも無関心な地域住民が少なくない。そのような地域の中にいる「多様な子ども」たちは様々な生きにくさを抱えています。少し前に「抱樸(ほうぼく)」という言葉を教わりました。枝を払っていない荒木をそのまま抱き止めるという意味だそうです。目指したい地域づくりはまさにこの言葉に表されているのではないでしょうか。
以上、COCOLOプランについて私なりに読み解いてみました。このページを訪れてくださった皆さんはいかがでしょうか。稚拙ではありますが、この小論が思いを巡らすきっかけになれば幸いです。
COCOLOプラン全体に関する文部科学省のサイトには次からアクセスできます。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1397802_00005.htm
(文責:加瀬 進)