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Case study『貧困』の支援事例

〜オンラインとオフラインによるハイブリッド型支援〜 沖縄県名護こども食堂1

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1.対象

地域の小・中学生(20名)

2.こども像

不登校・貧困等の学び困難状態を抱えていると考えられる。

スクールソーシャルワーカーが家庭へ個別に声かけし、希望した家庭のこどもが参加している。

3.支援者

こども食堂スタッフ(2名)

現地学生サポーター(1〜5名)

オンライン学生サポーター(5〜10名)

4.運営組織について

地域にこどもたちの居場所がないことにより、街を出歩き、登校に支障が生じたり、非行に至ったりするなどの問題があると聞き、こどもたちの居場所として立ち上げることとなった。

立ち上げ当初は『子ども達に食事の作り方を教え自ら食事を作れるようにする』という理想を掲げていたが、実際は食事をボランティアが作成し子ども達は周りで遊んでいるだけ。そのうち、全員が揃ってからの食事、箸の持ち方等々、気づかぬ内に「しつけ」が始まり、ルールに縛られ子ども達の心はどんどん離れていった。

改善の必要に迫られ、「大人の理想を押し付けるのはやめよう」という動きが始まる。初めて来たボランティアに研修を実施し、子どもの変化を確認する見守りの場所にした。

その頃、偶然にも沖縄の教育や貧困を研究している大学の先生が見学にいらしてご相談したところ、力添えを頂けることになり、オンラインでの大学生のかかわりの仕組みが開発された。

5.日程

毎週水曜日16:30-19:00

6.支援内容

前半と後半で活動時間を区分し、2種類の学習支援を実施している。

前半:アドバイスタイム(個別学習支援)

授業の予習・復習等、こども一人ひとりの個別学習ニーズに応じた学習支援を実施している。1対1に近い形でオンラインの大学生とこどもをつなぎ、現地スタッフがサポートに入る形で実施。一方的に知識を伝達するのではなく、こどもたちと対話しながら学習に関するニーズを理解し、学びへの意欲の高まりや、学びへの取り組み方を身につけることを支援することを目的としている。

▲アドバイスタイムの活動イメージ

後半:プロジェクトタイム(集団でのプロジェクト型学習支援) 

「地域固有の文化・自然資源」をテーマにしたPBL(Project Based Learning)を実施している。2021年度は、地域の名産品である果物を使ったオリジナルデザートを創作し、飲食店で実際に売り出すプロジェクトを行った。こどもも大人も一緒になってみんなでプロジェクトに参加して共に学び合う中に、人との交流や学習が生まれることを期待しながら実施している。また、このプロジェクトでは地域固有の文化・自然資源をテーマにすることで地域を盛り上げ、普段こども食堂に関わっているスタッフのみならず地域の様々な大人にもこどもたちにかかわってもらい、こどもたちを応援してくれる地域の仲間を増やしていくこともねらいとしている。

▲プロジェクトタイムの活動イメージ

また、こどもたちがこども食堂に集まってくる前の時間には、オンライン・オフラインの支援者全員でその日の支援の目標を共有したり、かかわりの具体的なイメージ共有を行ったりするためのミーティングを行っている。こどもたちが帰ったあとにはその日の支援の振り返りを行い、オンラインとオフラインの連携を深めていくとともに、一人ひとりの支援の質の向上を目指している。

 

7.学び困難支援事例から得られる知見

  • 支援においては、まずは子どもがやりたいこと、やってみたいこと、興味を持っていることに大人の側が寄り添い、子どもの世界を理解しながら子どもと一緒に活動しようとすることが重要である。
  • 子どもが夢中になれる活動に一緒に取り組む中で子どもの発言や思考を引き出したり、次の活動に取り組む際のアドバイスをしたりすることで、子どもたちの学習を促進することができた。

    ▲夢中になってつくったデザートについてやりとりする様子

  • 語彙の少なさや対人コミュニケーションへの不安などを抱え、オンラインでの会話をすることが困難な子どもたちに対しては、ホワイトボード機能や画面共有の機能を使い視覚的なコミュニケーションを用いたことによって、コミュニケーションが円滑になった。

    ▲ホワイトボード機能を活用した視覚的なコミュニケーション

  • オンラインでかかわる大学生がなるべく笑顔でゆっくりと話したり、身振り手振りをつけて子どもに声かけしたりすることで、子どもが応答しやすくなっている様子がみられた。
  • 問題等に取り組む子どもを支援する際には、手元を映し出すタブレットを設置することによって、子どもの取り組みの様子がオンライン上でも把握しやすくなり、声かけのタイミングを図りやすくなった。

    ▲手元を映すタブレット

    • 多人数で利用するイヤホンジャックの導入により、ハウリングを起こさず東京とのコミュニケーションがスムーズに行えるようになった。
    • 地域の特産品をテーマにしたプロジェクト型学習を実施したことで、子ども食堂を取り巻く地域の方、勝山シークヮーサーやCS関係者にも子ども食堂の状況を伝えるきっかけになった。
    • プロジェクト型学習では名護と東京のお互いの全体の様子がわかるような大型モニターを設置したことで、活動状況が視覚化され、「みんなで取り組んでいる」感覚を生み出しやすくすることができた。
    • プロジェクト型学習で現地の支援スタッフがタブレットを持ちカメラマン兼リポーターのような役割を果たすことによって、現地の子どもたちとオンラインの大学生との交流が促進された。
    • 普段はオンラインでかかわっていた大学生が、対面で子どもたちと直接かかわることのできる機会を創ったことで、その後オンラインでのかかわりに戻った際にもコミュニケーションが活性化された。
    • ハイブリッド型の学習支援ではオンライン支援を行う学生と現地にて子どもにかかわるスタッフとの連携・協力が必要となり、毎回子どもが帰った後に実施したレビューが連携・協力を深めるために重要な役割を果たした。
    • 教育を専門にしている大学生や教員と現地スタッフとの交流により、現地スタッフの支援の質の向上がみられた。
    • 実践を開始した当初、子どもたちの多くはオンライン交流に積極的ではなかった。その背景には、本人のコミュニケーション上の特性や、家庭の経済的困難や不安定さに起因する他者との交流体験の乏しさ、否定的感情等があると考えられた。上述した内容は、そのような子どもたちの特性や状況にあったハイブリッド型支援のノウハウとして活用可能な形で蓄積されてきていると考えられる。

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