2022年の児童福祉法改正について〜前編〜
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これまで過去2回に渡ってインタビューをさせていただきました、子どもの虹情報研修センター(日本虐待・思春期問題情報研修センター)の増沢高先生に、今回は2022年6月に改正した「児童福祉法」に関してお話を伺いました。
ー 今年改正された児童福祉法について教えてください。
はい、今回はかなりたくさんの内容が改正されました。児童福祉法はこれまで何度も改正されてきましたが、その中でも大きな改正のひとつと言えるでしょう。
今回の改正では大きく7点があります。
- 子育て世帯への包括的支援のための法整備
- 一時保護所や児童相談所での支援の向上、妊婦への支援の充実化
- 施設入所児童への自立支援の強化
- 子どもの意見表明を支援する仕組みの整備
- 一時保護判断の司法審査の導入
- 子どもに関わる福祉司の専門性向上
- わいせつ行為から子どもを守るための環境整備
特に大事な点について、順番に見ていきたいと思います。
まずは①子育て世帯に対する包括的支援のための法整備です。特に大きいものが「こども家庭センター」の設置です。
ー こども家庭センターとは?
先ほど市町村が要対協を設置するというお話をしましたね。(『虐待に関する世の中の変化』参照)
そして、各地域に福祉分野と保健分野それぞれに「子ども家庭総括支援拠点」「子育て世代包括支援センター」という子育て世帯に対する支援事業があることをご紹介しました。これは福祉と保健の、両者が協働して虐待について対応していくことで、より質の高いサポートができるようになっています。
今回の法改正によって、それぞれの相談・支援機能は維持したうえで、福祉と保健を一体化し、「こども家庭センター」を設置しましょうということになりました。
この設置は努力義務ですが、多くの自治体がこども家庭センターの設置に踏み切っています。この相談機関では、妊娠から子育てにかかわる様々な相談を受けてゆくことになります。
これまでは3歳児検診までは保健領域、それ以降は福祉領域というような住み分けがされているところもあったのですが、今後は妊娠期からでも福祉領域が積極的に関与して支援してゆくことになります。もちろん協働する機関は、この両者だけでなく、保育所や学校など、子どもと家族に関わる機関はここに参画し、虐待や不登校などの対応もしていきます。
ちなみに、全国の自治体数が1718がある中で、子育て世代包括支援センターはすでに9割以上の自治体に設置されています。(ちなみに、規模の大きな自治体では複数個所の拠点を設置しているところもあります)
ー 建物ができたことで変わることはありますか? この改正で具体的にどんなサポートが受けられるようになったのでしょうか?
一言でいえば、「今までよりもいろいろなサービスが受けられるようになる」という話です。
特に、親だけ、子どもだけ、を支援するのではなく、親子関係の構築を支援する、という視点も新たな柱として加わるなど、幅が広がるということです。
新設された事業は主に3つあります。
- 子育て世帯訪問支援事業
- 児童育成支援拠点事業
- 親子関係形成支援事業
の3つです。それ以外に今まであった一時預かり(ショートステイ)についても拡充がされています。
まず一つが子育て世帯訪問支援事業です。
後編では、新設された事業について詳しくお伺いしていきます。増沢先生、ありがとうございました!
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