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令和3年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」結果が公開されました。

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 文部科学省は2021年(令和3年)度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」結果を10月27日に発表しました。マスコミでも「不登校児童生徒、24万人を超える」といったように大きく取り上げられましたが、この調査には次のような特徴があります。

①国公私立すべての小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校、高等学校の児童生徒について毎年行っているものなので、どのくらい増えたかどうかをつかむことができる。
②不登校だけではなく、「暴力行為・いじめ・出席停止・長期欠席・中途退学・自殺・教育相談」について調査したものである。
③回答は各学校が行うものなので、学校が「不登校」の理由等をどのように考えているかがわかる。

 本記事では「長期欠席」のなかの「不登校」に話題を絞って概要をお示ししたいと思います。なお、年間30日以上欠席する者は「長期欠席」であり、そのうち「何らかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし,「病気」や「経済的理由」,「新型コロナウイルスの感染回避」による者を除く。)」が「不登校」としてカウントされています。年間30日以下の欠席は統計には含まれていません。

 

【この調査からわかったこと】

・小・中学校で不登校状態の児童生徒数は244,940人。前年度が196,127人だったので、48,813人増加している。
・高等学校で不登校状態の生徒は50,985人。前年度が43,051人だったので、7,934人増加している。
・すべての小・中学校に在籍する児童生徒のうち2.6%が不登校状態である。
・小・中学校で不登校状態の児童生徒数は2012年から9年連続で増加している。
・小・中学校で不登校状態の児童生徒のうち約55%が90日以上欠席している。
・小・中学校で不登校状態の児童生徒の半数近く(49.7%)の要因が「無気力・不安」とされている

 

なお、これまでの調査を含めて調査全体の結果は次のリンクからみることができます。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm

ただ、このリンクを開くとたくさん並んでいて驚かれるかもしれません。そこで、その中の「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果概要(PDF:1,437KB)」をクリックしてみてください。こちらは図表も用いられているので比較的わかりやすいものになっています。次のリンクからみることができます。

https://www.mext.go.jp/content/20221021-mxt_jidou02-100002753_2.pdf 

 

 概要に示しましたように、前年度に引き続き今年度も不登校児童生徒の数は増加しているという結果になりました。この結果は決して楽観できるものではありませんし、悩みや不安を抱えながら日々を過ごしている児童生徒のみなさん、そのご家庭に適切な支援が迅速に届くよう環境整備等を進めていく必要があります。

 ところでその際に、しばしば注目する必要があると指摘されるのが「不登校の要因」として示されている「本人に係る状況」、つまり「無気力、不安」が49.7%、次に多い「生活リズムの乱れ、あそび、非行」が11.7%という数値です。

 この数値に対して、しばしば取り上げられるのが2020(令和2)年度に文部科学省が小学校6年生と中学校2年生を対象に行った「不登校児童生徒の実態調査」や、日本財団による中学生本人を対象とした「不登校傾向にある子どもの実態調査(2018)」です。

 

2020(令和2)年度文部科学省調査の結果概要
https://www.mext.go.jp/content/20211006-mxt_jidou02-000018318-2.pdf
日本財団調査の結果概要
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/information/2018/20181212-6917.html

 

 こちらの文部科学省調査は回収率が低く(小学生6年生11.7%,中学校2年生8.2%)、日本財団調査は対象者数が6450人と比べ非常に少ないので、単純な比較はできませんが児童生徒本人の声ではあります。そして、気になるのが「最初に行きづらいと感じ始めたきっかけ」として「身体の不調」や「生活のリズムの乱れ」と並んで「先生のこと」「友達のこと」が20%以上あげられていること(文部科学省調査)、「中学校に行きたくない理由について、「身体的症状以外の要因では「授業がよくわからない」「良い成績がとれない」「テストを受けたくない」など、学習面での理由がみられた(日本財団調査)と説明されている点です。

 私たちこどもの学び困難支援センターでは「学び困難」とは何か、「学び困難の理由」や「本人にとって、今必要なことは何か」を追求し、こどもの最善の利益を第一に考えた支援方法を明らかにしようとしています。2019年に文部科学省から発出された「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」でも、「児童生徒によっては、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味をもつことがある」という指摘があります。短絡的に問題視するのではなく最善の利益を見据えて中長期的に支援を考えていけるよう、今後ともみなさんと一緒に考えていきたいと思います。